桃翠園
欧米諸国でニーズが高まっている抹茶・煎茶。茶葉を粉状にしたものが抹茶。島根の松江地方では18世紀ごろから茶の湯とともに庶民に広まり、和菓子と楽しまれている。日本の代表的な茶所である京都等、島根以外のエリアでは、本来は茶道で使われるが、島根の家庭ではカップに湯を注いで混ぜる等、生活にとけこみ日常的に楽しまれている。牛乳や豆乳で割っても美味しい。島根は日照時間が少なく、茶葉が色鮮やかでまろやかな味に育つ。
茶葉を揉んで乾燥させ旨味を出したものが煎茶。島根では農作業の休憩に漬物や煮物とともに楽しむ庶民的な飲み物だった。島根は寒冷なため茶葉のアミノ酸の蓄積が促進され旨味が濃い茶になる。
桃翠園は百年以上続く老舗。海外では抹茶が好評で、パティシエも愛用。可能な限り農薬・肥料を抑え、輸出に適した方法で栽培。地域の農産業の保全のためにも持続可能な生産を目指している。
抹茶・煎茶にはカテキンが多く、免疫力向上、抗菌、脂肪の燃焼促進などが期待できる。手軽に楽しめるため、多くの方に飲んでもらいたい。
一宮酒造
酒の個性を決める要素の一つが米。島根は寒暖差が大きい中山間地が多く、良質な米が育つ。また日本酒の80%は水であり酒づくりに欠かせない。島根は南側に中国山地があり、そこを水源とする川も多く水が豊富。美味しい米と水が、島根を酒造りに適した地にしている。
酒の醸造の責任者を杜氏と言う。かつては農閑期の冬に部下を連れて酒蔵に出向く季節労働者だった。現在は専業が主流。島根の杜氏は土地の味を追求し、地元の米を選ぶ傾向がある。近年は時流に合わせて多様な味に挑戦し、技術交流も活発で酒の味がバラエティー豊かに。飲み比べが楽しい時代になった。食べ物との合わせ方も酒の楽しみだ。例えば、スッキリとした大吟醸はタイのような淡白な刺身に合い、コクがある純米吟醸は煮込み、薫製、天ぷらなどの濃い味に負けない。
一宮酒造は地元の米で個性豊かな酒を造っている。女性杜氏も活躍し「若者や日本酒初心者の入り口になる酒を」との思いから、軽い口当たりのスパークリング酒や、バラや果物を使った酒などを開発。酒の多様性が、味わいの楽しみとともに広がっている。
森田醤油
日本の伝統的な発酵食品、醤油。伝統的な醤油づくりは、炒った小麦・蒸した大豆・麹菌を混ぜ、麹を育てることから始まる。3日程度かけて育てた麹に塩水を加えた「もろみ」を8~15カ月程度、長期熟成の場合は2~3年発酵・熟成させる。十分に熟成したもろみを圧搾し加熱殺菌「火入れ」をしたものが、醤油として食卓にのぼる。
醤油の味は、アミノ酸や脂質の旨味、糖の甘味などが複雑に混ざり合って構成される。大手メーカーは脱脂加工大豆が主流だが、森田醤油は国産大豆を豆のまま使用し、創業開始した1903年から続く伝統の味を守り続けている。
醤油は複数の種類がある。「薄口」は色が薄く「濃口」は濃い。ともに和食で料理に合わせて使われる。長期熟成した「再仕込み」は味が濃厚で、刺身や寿司に使われる。家庭でも食事に合わせて楽しむと良いだろう。
醤油醸造には昔ながらの杉の桶が使われるが、桶屋は後継者不足から消滅の危機に瀕している。森田醤油では醤油屋や職人など志ある若い世代が勉強会を開き、技術継承に取り組み、次世代を見据えた生産活動をしている。
一福
蕎麦は痩せた土地でも短期間で収穫できる穀物。17世紀ごろからファストフードとして楽しまれ、都市の食文化に定着していった。島根での食べ方の代表格は、丸い三段重ねの容器に入れる「わりご」。これは昔の殿様がたか狩りに出る際に四角い重箱に入れていたものが、衛生的な観点から丸い形になったといわれている。このスタイルが「出雲蕎麦」の特徴として知られる。
一福では、島根南部に位置する飯南や周辺地域の蕎麦を中心に使用し、自社で製麺。飯南は寒暖差が大きく、香り高い蕎麦が育つ。つゆには真昆布、湧水、地元醤油屋店の醤油を使い、蕎麦の風味を引き立てる。
出雲蕎麦は薄皮ごと製粉され、これを「ひきぐるみ」と呼ぶ。麺が黒っぽく、野性味のある香りが食欲を刺激。ポリフェノールのルチンが豊富なため、健康志向の人にも好まれる。茹でてから冷水にさらす「ざる」、ゆで汁と食べる「釜揚げ」など楽しみ方は多彩。ゆで汁は蕎麦湯として飲まれ、健康成分を効果的に摂取できる。蕎麦の実を使った茶や菓子などもあり、血糖値や血圧が気になる人に健康食として注目されている。
SOL JAPAN
島根は日本海に面し、寒流のリマン海流と暖流の対馬海流が混じり合う豊かな漁場に恵まれている。ノドグロ、タイ、ブリ、アマダイなど四季折々に楽しめる。
島根の水産物を語るときにまず欠かせないのが隠岐諸島と浜田市。隠岐諸島は綺麗な海域にあり、シロバイガイ、ヒオウギガイ、イワガキなどの貝類が豊かに育つ。浜田市は西部にある日本屈指の漁港。高鮮度のアジ・ノドグロ・カレイは、「どんちっちブランド」として県内外で楽しまれている。
SOL JAPANがあるのは松江市。この地域では環境負荷の少ない定置網漁業が多く、網は漁港から15~20分程度の海域に仕掛けられる。さらに各漁港と市場が近いため、新鮮な魚介類が仕入れられる。松江市には汽水の宍道湖があり、ウナギやシラウオといった和食で愛される食材が手に入るのも魅力だ。
SOL JAPANでは、魚介類を鮮度が高いうちに処理し急速冷凍するため、味を損なわずに輸出できる。例えばタイは骨を外し、サザエは殻から身を取り出してあるため、解凍するだけで手軽に楽しめる。島根の海の幸を、ぜひ世界の人々に堪能してもらいたい。